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TOKYO VERDY EVOLUTION WEEK  BUSINESS TALK SESSION

#1 TOWN スポーツと街づくり

2020年2月17日に行われた、東京ヴェルディビジネストークセッション『オフザピッチにおけるチャレンジと共創』のイベントレポート。

 

渋谷という街の街づくりの話から、代々木公園エリアにおけるスタジアム構想。そこに対する東京ヴェルディの関わり方と今後の展望まで、一般社団法人渋谷未来デザイン 理事/プロジェクトデザイナー 金山淳吾氏と東京ヴェルディ株式会社 代表取締役社長 羽生英之、ファシリテーターとして東京ヴェルディ株式会社(株式会社リトリガー)パートナー営業部プランナー 八木原泰斗が語り合いました。(以降敬称略)

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可能性を育むことで課題も解決する

八木原 このイベントはパイオニアスピリッツをアイデンティティに持つ東京ヴェルディがピッチ外で取り組んでいる様々なチャレンジについて、どんな方とどんなチャレンジをしているのか、お話していくトークセッションです。お二方よろしくお願いします!

 

金山 よろしくお願いします。

 

羽生 よろしくお願いします。

 

八木原 今日は【ヴェルディ×渋谷】スポーツと街づくりがテーマということで、早速渋谷の街づくりについて、からお話していけたらと思います。金山さんから渋谷未来デザインと渋谷の街づくりについて、どんな取り組みをしているのか、教えてください。

 

金山 まず、誤解なきように言っておきますと、僕たちは直接的に渋谷の街を作ってるわけではなく、渋谷区の街づくりの方針に従って外郭団体の運営経営をしています。

 

渋谷区長である長谷部健さんが掲げたスローガンが「可能性をはぐくむ街、渋谷区」というものになります。渋谷区は、当然課題もあるのですが、可能性を育むことで課題ごと解決してしまおうというのが、大きなヴィジョンとなっています。渋谷区はこのスローガンのもと、基本構想を立てています。

 

確実に安全であるものから街を作ってきたのが20世紀の街づくりだとすると、非常に21世紀的な街づくり。新しい実験事業も含めて、街と企業で組んでカルチャーを作っていこうというのを積極的に推進しているのが今の渋谷区です。

 

基本構想を実現するというのは渋谷区の大きなヴィジョンで、それ以外に福祉・健康・教育・防災などがあるのですが、それ全部を約2,000名の区役所の職員だけでやりきることは不可能なんですね。

 

そのために外に色々な団体がありまして、そこに業務を移管して一緒に走っていく体制を取っています。その中の一つに渋谷未来デザインがあり、基本構想ができた後に設立された団体なので、スピードを早くバリューを高く実現していくためのミッションを持った団体だと理解していただけると分かりやすいかと思います。

 

新しい都市体験、新しい空間の価値、市民との共創、渋谷のブランドデザイン、渋谷で作ったロールモデルを展開、と5つの活動に分類できます。夢は大きいんですけど組織はまだ小さくて、約20人程度の団体ですね。

 

八木原 ありがとうございます。今度は渋谷におけるヴェルディというところで、代表的な活動を含めてお話を羽生さんに聞いていきます。

 

羽生 はい、まず530(ごみゼロ)というゴミ拾い活動をグリーンバードさんと一緒にやっていて、これは私がヴェルディに来るずっと前からやっている活動です。

 

金山 同じ緑がご縁で、確かヴェルディが1番最初に支援をしてくれた団体だったんじゃないかと思います。

 

羽生 他には障害者の方と一緒にスポーツをする活動(障害者スポーツ体験教室)で、ホームタウンの多摩地区などでは昔からやっている活動なのですが、渋谷区さんとは昨年からやり始めていて。とてもニーズがあって喜んでいただいているので、もっと広げていきたいと考えています。

 

今ヴェルディは15競技17チーム持っていまして、例えばビーチサッカーはちょうど昨日開催されていた世界選手権で4位になりました。(会場拍手)渋谷区の宮下公園にはビーチサッカー場の建設が予定されているので、今後練習に使わせていただくかもしれません。

 

私たちはどんどん競技を増やしていこうという方針なので、例えばストリートスポーツも宮下公園を練習場にさせていただいたり、イベントをやったりこれからどんどん広げていきたいなという風に思ってます。また、ヴェルディは今後10年でスポーツクラブから総合クラブになりたいなと考えているんですね。

 

音楽とか芸術という分野でもヴェルディブランドを背負って活躍できるような人材を育てていき、そうした人材育成のハブになりたいと思っています。そういう意味で宮下公園の施設は、私たちにとってもシンボルのようなものになるかもしれませんね。

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ヴェルディは渋谷でハブになれる

八木原 その流れの中で、スポーツができること、総合クラブのヴェルディとして渋谷にどんなところで貢献していけそうですか?

 

羽生 サッカーのビジネスはまずスポンサー収入、入場料収入。他に私たちで言うとサッカースクールなどの普及部門の収入、後はグッズの売上というのが一般的な収入源とするところなんですけども。親会社のないヴェルディはそれだけに頼っていたのではこれからの時代を生きていけない、ということで今年からヴェルディは、私たちの事業はブランドビジネスですと言い切っています。

 

そのために今年からエンブレムを変えました。競技を増やしてるという話もしました。これからスポーツの垣根を越えていきたいという話もしました。私たちができることというのは、ハブになるってことなんですよね。

 

Jリーグの今のやり方は頂を高くしようということをやってます。頂を高くすることで裾野を広げるという手法ですと、親会社のない私たちみたいなクラブは正直つらいです。Jリーグの分配金は傾斜配分のため、どんどん上のクラブに資金が流れていき、それがそのまま私たちと上位カテゴリーのクラブとの明確な実力差になってしまう。その中で私たちはアカデミーにすごく特化して、子どもたちを育てて戦うということを選択しています。そういう中で、ヴェルディが渋谷でできることっていうのはハブだなと。人材を育成することも含めたスポーツやエンターテイメントのハブになるということは絶対にできると思ってます。

 

我々が渋谷区のブランドイメージをさらに上げるようなことをもしできたら、それこそがヴェルディのブランド価値に繋がって行くと思います。

渋谷の中心に文化的な体験を

八木原 では、スタジアム構想の話に移っていきたいと思います。スクランブルスタジアム渋谷構想はまさに、金山さんたちが中心となって進めていただいているプロジェクトですよね。

 

金山 そうですね。代々木公園って渋谷区のど真ん中にあるんですけど、ここは都立の公園で独立行政法人が持っている施設になります。つまり渋谷区が変えたいと言っても公園は変えられないんですよね。渋谷区としてだけではなく世の中にもっと文化的な体験を増やしていきたいのですが、現状はマイナーチェンジばかりなのも実情です。

 

保育園が少ない、じゃあ代々木公園の中に保育園をつくりましょう。犬を連れて行く場所がない、じゃあドッグランをつくりましょうみたいな。でもこういったマイナーチェンジ施策と“可能性を育む”と言う区のスローガンとは真逆の話で。そういう部分と渋谷区の基本構想とを掛け合わせて新しいものを考えていくと、結果的にスタジアムというものが浮かび上がってくるんです。

 

マイナーチェンジではなく、総合的にアップデートしていくとなると開発に時間がかかると言うことで202X年、東京オリンピックを経てさらに文化的に高度な成熟した大人の空間にしていきたいと考えています。

 

緑の公園は自然の景観と、人にとって穏やかに過ごせる場所を提供しているんですね。それを残しつつも、どうやって機能を強化していくかということを考えなければいけない。現状はイベントフィールドや野外音楽堂、陸上のトラック、トイレなどの施設も含めて点在されていて整理されているとは言い難いです。そこに例えば全天候型のスタジアムがあれば、エンタメとしての施設としても機能するし、もちろんスポーツの拠点としても機能します。

 

雨天のリスクも半減させることができますし、大事なのは多様な文化をつなぐ拠点として、渋谷区の真ん中を整備できるというのが大きなポイントです。ですから必ずしもスタジアムだけをつくりたいというわけではないんですね。

 

八木原 確かにそうやって聞くと納得感があります。今度はスタジアムにはどういった可能性やポテンシャルがあるのかという部分を深掘っていきたいなと思うのですが、いかがでしょう。

 

金山 防災拠点ということも中心の1つに置いてるんですけど、これは必ずしも防災って言っとけばなんとかなるんじゃないか、という話ではなくて、昼間人口が非常に多い渋谷で、例えば地震だったりこの前みたいな大型台風などの災害があったら、今の代々木公園に逃げたい人がいるのだろうかと。後期高齢者、妊産婦さんが代々木公園にいらっしゃったとき、昨年のような猛暑が続くとして、果たして居場所として最適なんだろうか。こういったことを考えると、今後の備えとしては不十分なんじゃないかと考えています。

 

サッカーを中心とした地域振興のモデルというのも、ぜひつくりたいなと思っています。渋谷は本当に多様な価値観の人たちの集積地なので、ひとつひとつのコミュニティ規模が小さいんですよね。5-10万人が集まるコミュニティがあると、防災の観点からも良いことなんです。そういうところでスポーツの力は大きなものだと思っています。それには練習か試合をする場所がないといけないので、スタジアムを誘導することができれば、拠点と胸を張って言えるんじゃないかと。

 

それに合わせて、渋谷はホテルがすごく少なくて、宿泊地のポテンシャルとしては高いんですけど物理的な客室が無いという問題を抱えています。なので公園空間にホテルを誘致したり、一緒にカンファレンス会場を誘致して産業展覧会を開いていったり、そういった世界最先端のスタジアムを作っていきたいなと。ただスポーツやエンタメを楽しむ場所ではなく、学びの一環として、生涯学習ができるような拠点として代々木公園をアップデートしていきたいなと思っています

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想いと熱量は場所に宿る

金山 スクランブルスタジアムの絵は古墳型のスタジアムの絵を出しているんですが、設計思想としては緑の空間を守っていきたいというのがあります。表参道とか明治神宮のレガシーとしてグリーンがあるので。一方で森に埋没してしまうスタジアムを作ることが果たして正しいのか、というのはすごく迷っています。

 

ビルバオにグッゲンハイム美術館という美術館があるんですが、外観がとても評価されているんです。そのためにビルバオに行く人も多い。そういったインパクトのあるものを作っていくべきなんじゃないか、ということと自然との共生をどう両立していくことができるのかっていうのが今回のプロジェクトの最大の争点なんじゃないかと思っています。

 

羽生 私もサッカー場をつくるというより、『この施設でサッカーもやってるんだ』という複合型施設が良いと思うんですよね。

 

今スポーツ界で問題なのは部活なんです。中学年代の部活に先生方の手が回らなくなっていて、顧問の先生のなり手が居ないんですよね。ですから、こういうスタジアムを作って、渋谷の小中学生はここでスポーツの授業ができる、運動会をやっても良いです。それを東京ヴェルディがプロデュースして指導者もやるとか。そういったソフトは提供できると思うんです。

 

八木原 さて、次はスタジアムと街づくりの関係についてお話していければ、と思います。

 

金山 シビックプライド。市民が持つ都市に対する誇りみたいなニュアンスで使われるんですが、このシビックプライドはどうやって育つのかと考えてまして、書籍を読むと例に出てくるのはヨーロッパのサッカーチームの話なんですね。サッカーチームがあることでその街に自分たちが感情移入して、家族のように選手を応援して、勝ったら喜んで、負けたら慰める。そういうことが地域の愛着を可視化しているんじゃないかと解説されているんです。

 

僕たちはこのシビックプライドは場に宿るんじゃないかと考えています。このシビックプライドというのを世代もバラバラ、趣味嗜好もバラバラ、大きなコミュニティも無い街の中で作っていこうと思うと、まず場の整理が重要なんじゃないかと。場を作ることで、そこにコミュニティが生まれるし、その場に新しい感動体験がもたらされると思うんですね。

 

八木原 ありがとうございます。ではスタジアム計画の現状ステータスや今後の動きはどうなっていくんでしょうか。

 

金山 この後のアクションですと、今年の4月ぐらいをターゲットに渋谷区と渋谷未来デザインとで、東京都にこの構想を提案したいと思っています。今日いただいた意見なんかも組み込ませていただいて、市民の声、業界団体の声を届けます。

 

この土地は渋谷区だけでは案件化できないエリアなので、東京都のコンセンサスを持って、案件化の一歩を踏み出せるということになります。今年都知事選があるので、当然リーダーによって潮目が変わると思いますが、その後もアップデートし続けて東京都に提案しながら2020年以降を過ごしていきたいと思っています。渋谷の再開発ですと2027年がターゲットになっていまして、桜ヶ丘の開発などが完成してくる。渋谷のハチ公前広場も変わって、2027-8年には形になってくるので、そのとき代々木公園もアップデートされるような形になったら理想ですね。

 

八木原 まずは管理者である東京都のプロジェクトとして認めてもらうという作業ですね。その後順調にいけば、2021年頃に公募がかかり、2022年頃に実施計画、という流れですかね。この公募にヴェルディが絡めれば、ディスカッションで出てきた「ヴェルディグリーンスタジアム」なんていうのも夢ではないですね!スタジアム計画とともにその後目指していく未来についてはいかがでしょう。

 

金山 未来の街となると、全てが変化してしまうという風に思われてしまうことが多いんですけど、何を残して何を変えるか。どう残すか、どう変えるかの掛け算だと思うんですね。常に良いシナリオにアップデートしていくやり方でやっていこうと思っているので、今はハッキリとした未来の像は見えませんが最良のやり方で街を作っていきたいなと思っています。

 

その流れでご協力いただきたいことがありまして、https://scramble-stadium.tokyo/で賛同の声を集めています。このプロジェクトを応援してくれる方が増えていくと良いなと思っています。インパクトのある賛同の声を集めて、東京都と事業開発に着手できると良いなと思っています、ぜひお声がけをしていただけると嬉しいです。

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八木原 最後に羽生さんから、ヴェルディと渋谷とで共創していく未来についてを伺います。

 

羽生 場所に宿るものにはとても共感できます。いろいろありましたが、ヴェルディの練習場は未だによみうりランドの中にあるんです。私が社長になった時に早くこの場所から出ないといけない、と思って社長をやっていたのですが、最近はあの場所に宿っているなにかがあるから、子どもたちが育っているんじゃないかって思っていて。

 

それが50年の歴史なのかなと思うんです。なので、新しいスタジアムができるのであれば、そういうスタジアムになってほしいと思います。ヴェルディとしてはハブになりたいという話をしています。多様な目的のために使えるスタジアムの中で私たちヴェルディができることをやる、そういう場所にしていきたいと思います。ソフトは色々変わっていくけども、外観は一年一年の重みで重みが増していく、そんなスタジアムになれば良いですね。

 

八木原 ぜひヴェルディが新スタジアムでそういう場所と時代を創っていけることを願いつつ。登壇者のお二方、本日はありがとうございました!

 

金山 ありがとうございました。

 

羽生 ありがとうございました。

​ライター:渡邊志門

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GRAFIC RECORD

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